平成27年4月10日、社会福祉法人制度改革緊急セミナー「社会福祉法人制度はこう変わる/今、何が必要なのか」を開催しました。当日はあいにくの悪天候にも関わらず100名を超える方々にご来場いただきました。以下では社会福祉法人を「社福」と略しています。

第Ⅰ部 社福制度はこう変わる/今、何が必要なのか

(1)社福制度改革の背景

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社福制度改革の背景として以下の2つの点を挙げることができます。

①社福に対する批判

日経新聞に「利益貯め込む社会福祉法人」との記事が掲載されて以降、非営利性を保つべき社福が利益をため込んでいるのではないかという批判や、公益性に反して過大な役員報酬を支給したり、親族が運営する関連企業に有利な条件で取引を行ったりといった経営の不透明さについての批判も継続してなされています。

社会保障支出が増大し続けているなか、補助金や税制優遇措置を受けている社福がこれらの批判を受けて国民に対して一定の説明責任を果たすべく、その制度改革が議論されてきました。

②他の経営主体とのイコールフッティング

有料老人ホームはNPO法人や株式会社等の法人の施設数の割合が全体の9割近くを占め(平成24年10月1日時点)、保育所はJPホールディング等の株式会社が年々収入を増やしており、収入金額の上位は株式会社が占めている状況となっています。

同一の事業を行っているにも拘らず株式会社等には補助金や税制優遇措置はありません。上述①の批判も踏まえ、規制改革実施計画が他の経営主体と社福についてイコールフッティング(足並みを揃えること)の観点から社福制度改革を求めるに至りました。

(2)社福制度改革

上記の背景をもとに、ガバナンスの強化や事業運営の透明化の観点から制度改革が行われます。その中でも重要なものは以下の通りです。

①経営組織の在り方の見直し
理事会における理事・理事長に対する牽制機能が制度化されていないため、理事会を業務執行に関する意思決定機関と位置付け、理事・理事長に対して牽制機能を働かせるようになります。また、任意設置の諮問機関であった評議員会を法人運営と事後的な監督を行う機関とし、必置の議決機関とします。
他に一定規模以上の法人への会計監査人による監査を義務付けます。

②運営の透明化の確保
定款・計算書類・役員報酬基準をHP等で国民一般に対して公表することが義務化されます。

③適正かつ公正な支出管理
適切かつ公正な支出管理を行うために、法人による役員報酬基準の設定と公表、役員区分毎の報酬総額の公表が求められます。また、親族等の関係者への特別な利益供与の禁止が法定されるとともに、関係者との取引内容の公表の対象範囲が拡大します。

④余裕財産の明確化と福祉サービスへの再投下
内部留保のうち、事業継続に必要な財産を除いた余裕財産について、福祉サービスへの再投下計画(社会福祉充実計画)を作成し、所轄庁による計画の承認、実績の所轄庁への報告と公表が必要になります。

(3)社会福祉法人の経営に求められること

社福は措置制度のもと、行政主導の福祉サービス事業を行ってきました。その後、社会福祉事業への民間活力の導入という目的で社福に委託するようになり、社福は主体的に経営を行うことができるようになりました。
このたび、上述のような背景の下に社福制度改革が行われるに至り、措置制度から委託制度という流れによって得た「主体的な経営」を失っていく可能性も否定できません。
そうならないためには、適切な経営を行い、成果を公表することはもとより、社福にしかできない役割を果たす必要があります。

福祉サービスはNPO法人や株式会社等の社福以外の経営主体でも行えます。社福にしかできない役割とは何でしょうか。それは地域の社会福祉を守ること、地域の社会福祉の核になることではないでしょうか。確かに、今回の制度改革は社福にさまざまな負担を強いる内容となっていますが、その負担を「大変だ」とばかり捉えるのではなく、社福だからこそできる役割は何かを再考し、地域社会に貢献することを通じて自らも発展する契機として、制度改革に取り組んでみてはいかがでしょうか。

第Ⅱ部 「指導監査」とは異質の会計監査人制度

(1)会計監査人制度強制適用の対象となる社福

今回の制度改正で収益10億円以上又は負債総額20億円以上の社福で会計監査人制度が強制適用されることになります。motoi20150410

具体的な基準は以下の通りとなります。

①収益基準(直前期の収益金額で判断)
新会計基準適用の場合(平成27年度から適用される会計基準):事業活動計算書のサービス活動収益計が10億円
旧会計基準(現在適用されている会計基準):事業活動収入計から借入金元金償還補助金収入、引当金戻入、国庫補助金等特別積立金取崩額を除いた額が10億円

②負債基準(直前期のの負債の金額で判断)
貸借対照表に計上された負債の額が20億円以上

(2)会計監査人監査とは

会計監査人監査は行政による「指導監査」と異なり、財務諸表等の適正性を監査するものです。財務諸表等に対して第三者の独立した立場から信頼性を付与(保証)するという役割があります。

(3)会計監査人監査と行政による監査

公認会計士監査が導入され、一定の要件を満たす法人については、行政による定期監査の実施周期の延長や、監査項目の重点化等の仕組みの導入が議論されています。

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